原料は小麦、水、食塩だけ。
その中でも特に重要なのが小麦粉です。
現在でも原料は吟味を重ねて選んでおりますが、何よりも大切なことは伝統の製法をかたくなに守り続けることと考えております。
日々の気候に応じて微妙に変わる原料の混ぜ合わせ、練り、熟成、手綯い、延ばしなど、すべては熟練した職人の手技から生み出されます。
小麦は、栽培の季節により、「春小麦」「冬小麦」、粒の色によって「赤小麦」「白小麦」、また粒の固さによって
「硬質小麦」「中間質小麦」「軟質小麦」に分けられます。これらを組み合わせて、「軟質白小麦」といった呼び方をします。
その他、菓子用、麺用など用途で分ける場合もあります。
グルテンは、小麦のたんぱく質です。小麦粉に水を加えてこねると、小麦粉に含まれるグルテニン、グリアジンの二つのたんぱく質から
小麦粉特有の弾力性と粘着性を持ったグルテンが作られます。うどんのシコシコした歯ごたえはグルテンの働きです。
小麦以外の米やとうもろこしなどの穀物の粉はグルテンがないため、うどんを作ろうとしてもプツンと切れてしまいます。
また、同じ小麦でもたんぱく質の少ないものは、こしの強いうどんを作ることはできません。
稲庭の里で稲庭うどんが誕生したのは、たんぱく質の多い、良質の小麦の産地だったからです。
硬質赤小麦:
カナダおよびアメリカ産。たんぱく質の量が多く、パン用小麦の代表。
軟質白小麦:
たんぱく質が少なく、菓子用小麦の代表。
ロール機で粉砕された小麦(左端サンプル)が数種類の粒度のもの(ストック)に振り分けられる。
純化:ロール機で粉砕した小麦の胚乳部を粒度と比重を利用し、重い胚芽部と軽い皮部を分離する。
小麦は、皮が厚くて強く、中央に深い溝があるため、外側から削ることができません。
粒のまま炊いても美味しくなく、消化も悪い小麦は、粉にして調理すると美味しく、消化も良くなります。
そのため、粒を砕いて粉にしてから表皮や胚芽の部分を取り除きます。
人間が小麦を食べ始めたのは1万年以上前。日本で小麦が栽培されたのは、今から二千年前の弥生時代です。
中国から、現在のうどんや素麺にあたる「めん」の製法が伝えられたのが7世紀頃。
当時の製粉は石臼を回して小麦を粉砕し、ふるいにかけ、
表皮や胚芽を取り除く作業を何回も繰り替えし、質の良い小麦粉に仕上げました。
現在は2本のロールで小麦を粉砕するロール機が主流。
さらにピューリファイヤーという純化機(粉砕した小麦粉をセモリナ(胚乳)とふすま(皮)に分ける機械)も発明され、
小麦の品質は飛躍的に向上し、江戸時代より数段美味しい稲庭うどんになりました。
ロール機。小麦を粉砕します。粉砕されたものは「ふるい」にあけ、さらに別のロール機にかけられます。
小麦を粉砕するロール機のロール部分。ロールに刻まれた刃は最初は荒く、次第に細かくなっていく。